研究から探す

画像認識技術 スポーツ分野活用で成果。

※この記事は2025年2月に神戸新聞に掲載されたものです。

 大学の使命は社会の役に立つ最先端技術を開発することに加え、それを実際に活用できるように学生に教育するということが挙げられます。特に、情報技術の分野では近年の人工知能(AI)ブームにみられるように、革新的な技術が次々と生まれています。私たちの研究室では、スポーツの分野にAIの一つである画像認識技術を活用するスポーツ情報学の研究と教育を行っています。

 私立大学の特徴の一つは、学問だけでなくスポーツにたけた学生も多くいることが挙げられます。関西学院大学体育会に所属する部活動には、アメリカンフットボールをはじめとして、全国レベルのチームが多くあります。理系学部ではそのような学生の数は少ない方ですが、私の研究室でもこれまでサッカー、フィギュアスケート、バドミントン、アメリカンフットボール部に所属する学生が卒業研究を行ってきました。

 実際に部活動に関わっていなくても、スポーツは一般の学生にとって身近なものであり、興味を持つものも多いです。情報技術の習得とは、単に情報機器を使いこなせる能力だけでは不十分で、社会の課題に対してそれを適切に活用できる能力が重要になります。スポーツは学生自身が興味を持ち、積極的に課題に取り組むことのできる教育に適した分野でもあるのです。 最近の画像認識技術は、画像処理装置(GPU)が搭載されている市販のゲーム用パソコンでも十分な性能を発揮できます。「YOLO」と呼ばれるソフトウエアを用いると、動画を自動的に分析し、映像中の人体の位置やその骨格を抽出することが可能です。

 今年の卒業研究では、アメリカンフットボール部「ファイターズ」の川村匠史(たくみ)さんが、練習で活用できるコンタクト姿勢評価システムを開発しました。川村さんはファイターズのレギュラープレーヤーであり、海外遠征や甲子園ボウル出場の経験もあります。

練習中の動画を撮影し、画像認識の技術を用いて、その姿勢を評価するシステム

 アメリカンフットボールは激しいコンタクトスポーツであり、正しい姿勢で相手選手とコンタクトしないと大きなけがにつながります。そこで練習中の動画を撮影し、画像認識の技術を用いて、その姿勢を評価するシステムを開発しました(写真)。このシステムでは物体認識と骨格推定の機能を用いて、動画中に映っている多くの人の中から、コンタクト練習をしている2人を認識し、コンタクトの瞬間の画像における姿勢の評価とアドバイスを出力します。

 スポーツの分野では、アスリートのトレーニング、データ分析によるチーム強化、エンターテインメント性の拡充によるファン獲得などを目的として、最新の情報技術がどんどん取り入れられています。スポーツ情報学を学んだ学生が、スポーツと情報の二刀流の技術者として社会で活躍してくれることを期待しています。

北村 泰彦</span> 教授

KITAMURA Yasuhiko

情報ネットワーク技術のスポーツ・健康分野への応用について研究しています。Google StreetViewと自転車を組み合わせたバーチャルサイクリング、スマートフォンを持つランナー同士が仮想的な競争ができるバーチャルマラソン、人工知能技術を用いたスポーツ画像解析など,運動促進や健康維持に関する研究を行っています。