研究から探す

代数幾何学 一番きれいな三角形とは。

※この記事は2026年3月に神戸新聞に掲載されたものです。

 数学の中でも、代数幾何学という分野の研究をしています。

 ごくおおざっぱに言って、代数学は数や式などの対象を研究する分野、幾何学は図形などの性質を研究する分野です。図形などの幾何学的対象を、数や式の性質を目いっぱい使って「代数的」に研究するのが代数幾何学です。その際、重要になってくるのは対称性という概念です。

図①

 図①を見てください。これらの三角形の中から、「一番形が『きれいな三角形』を選んでください」と言われたら、どれを選びますか?

 好みは人それぞれなので一概には言えないかもしれませんが、右から2番めの正三角形が一番「きれい」「美しい」と感じますよね。それは三角形たちの中で、正三角形が対称性を一番たくさん持っているからです。

 正三角形は対称軸が3本あって、それぞれの軸に関する折返しで対称です。さらに、正三角形の重心を軸に120度回転、240度回転で形が不変という回転対称性もあります。

 図形を不変にする操作を「合同変換」といいます。正三角形の合同変換を実際に書き出してみましょう。

図②

 図②の左のように、正三角形の各頂点に1、2、3と番号をつけて、対称軸ℓに関する折返しを「a1」、対称軸mに関する折返しを「a2」、対称軸nに関する折返しを「a3」と名前を付けます。

 また、重心を中心とした反時計回りの120度回転を「b1」、240度回転を「b2」、360度回転(=何も動かさない)を「e」と表します。

 すると、正三角形の合同変換は「e」「a1」「a2」「a3」「b1」「b2」の計6つです。

 一方、図②の右の二等辺三角形は、対称軸Lに関する折返しを「a」と名付けた場合、「a」では不変ですが、他に対称軸はありません。

 また、360度回転(=何も動かさない=e)以外の回転対称性もありません。よって二等辺三角形の合同変換は「e」「a」の二つです。

 正三角形の合同変換は6つあったのに比べると、少ないですね。つまり、たくさんの合同変換をもつ図形のほうが対称性が高いと言えます。

 正三角形の合同変換からなる集合をGとすると、G={e、a1、a2、a3、b1、b2}と記すことができます。実は、集合Gは数学で「群」と言われるものになっています。群としてのGは3次対称群と呼ばれます。

 このように対称性は群で表すことができます。群は代数学や幾何学の研究において重要なツールの一つです。みなさんも群を使ってさまざまな幾何の研究をしてみませんか?

増田 佳代</span> 教授

MASUDA Kayo

(複素)アフィン空間をはじめとする代数多様体について研究しています。n次元アフィン空間とは、各点がn個の複素数の組で表される空間で、1次元なら直線、2次元なら平面となります。代数多様体を、対称性に代表される群の作用という観点から研究しています。