川口 竜斉さん

誰でもイメージ通りの作曲が
できる仕組みを、
GPT-4で実現。

工学部 情報工学課程 4年生
※取材当時

川口 竜斉 さん

昨今の音楽生成AIは優秀で、テキストを入力しただけで、すぐに新しい音楽を作り出せます。音楽の知識がない人でも自分の想像を超える楽曲が作れますが、一方でユーザー自身の意図やイメージに沿った楽曲を作るのはまだまだ難しいというのが現状です。そこで僕は、GPT-4 に与える命令を工夫し、対話的に作曲を進められる枠組み作りに挑戦。例えば「太陽のように明るい曲を作って」と命令して出来上がった作品に対して、「コード進行は変えずにメロディだけ作り直して」「3/4拍子にして」などと命令を加えたり、「明るさ」「躍動感」といったパラメーターを変化させたりすることで、自分のイメージする楽曲へとどんどん近づけていくことができる、といった仕組みです。

「AIが作った楽曲ではあるけれど、そこに自分のこだわりがしっかりと込められている。そういった創作の形態ができるのではないかと考え、この研究を進めています」。こうした研究活動を自分自身が楽しむことと、自分が楽しいと感じることを多くの人とシェアしたいという思いが、川口さんのモチベーションとなっています。

先輩たちから受けた刺激や
先生との対話が、今の研究の出発点。
早くから学会発表で認めてもらえ、
「やれる」という自信が芽生えた。

人を喜ばせることが好きで「自分でゲームを作ってたくさんの人に楽しんでもらいたい」と考えたことが、僕が情報技術を学ぶようになった理由です。でも大学に入学するまでは「何かを作り上げたい」という気持ちはあっても、そこに辿り着くまでのハードルが高く感じられ、自信が持てませんでした。
そんな僕に刺激をくれたのが、関学の先輩たちです。入学早々から授業で先輩たちの研究内容を紹介してもらう機会があり、そこから話が盛り上がって、いろいろな研究室を訪問させてもらうようになりました。そのたびに今まで知らなかった新しい技術分野に触れ、なかでも片寄晴弘先生の研究室で取り組まれている音楽情報処理・エンタテインメント研究の楽しさに引き込まれて、2年生からこの研究室で先輩たちと何かを作るといった日々を過ごすようになったのです。片寄先生に自分の考えを話す機会も増え、そうしたなかでGPT-4による対話的音楽生成という今の研究テーマも形になっていきました。そして3年生の時、この研究について学会で発表し、先生や先輩方の力添えもあり賞までいただけたことで、「外部の方から見てもしっかりと良い研究に仕上げる力が自分にはあったんだ」と気づくことができ、まだほんの少しですが、ようやく自信が持てたように思います。

情報技術は、楽しさをみんなで
シェアするための面白いツール。
その本当の魅力を、より多くの人に
伝えられるようになりたい。

実は中学生の頃、数学や物理が苦手でした。でもゲームが好きで、ゲームを作ろうと考えた時に、三角関数や微分などの要素がたくさん出てきて、気づいたのです。自分が面白いものを作って、そのイメージを他者にしっかりと伝えるうえで、数学や物理はすごく「使える」もので、しかも「面白い」ものなんだと。そこから数学や物理を学ぶモチベーションがアップし、大学でも「情報技術だけでなく、現実世界での機械の動きなども学びたい」と考え、2つの分野を行き来しながら学べるマルチプル・メジャー制度※のある関学を選びました。例えば材料力学や機械力学の授業では、情報系では出てこないような考え方に触れられ、興味深かったです。「ソフトウェアとハードウェアの接続点を知る」といった学び方ができるのが、関学の魅力ですね。
学部卒業後は大学院に進学し、この研究室での活動を通してさまざまな知識やスキルをさらに高めていこうと考えています。そのうえで将来は、ゲームエンジンのような人を楽しませる技術の基盤の開発に携わりたい。そしてもう一つ、コンテンツ発信などを通じて、情報技術の楽しさをエンタテインメントとともに伝えるような活動がしたい、という夢も持っています。たくさんの人に知ってもらいたいんです。情報技術って、自分が楽しいと感じることを他者と共有できる面白いツールなんだ、ということを。

PROFILE

川口 竜斉さん

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工学部 情報工学課程 4年生
※取材当時

川口 竜斉
(かわぐち りょうせい)

兵庫県・私立三田学園高校(理系特進コース)出身。「面白いゲームを作って人を楽しませたい」という想いから、情報技術を深く学べる大学への進学を希望。なかでも関西学院大学の工学部を選択したのは「情報技術だけでなく数学・機械工学など広く学べ、現実世界で自分の作ったものを動かすための知識も習得できるから」というのが大きな理由。入学後は情報工学課程で、メディア情報処理・エンタテインメントなど知覚や人間の感覚を扱う学問を中心に学び、そのうえで計算幾何学や最適化理論など情報科学を取り扱う科目や、コンピュータアーキテクチャ・コンパイラなどハードウェアに関わる科目まで、できるだけ数多くの情報技術に触れられるよう意識して履修している。さらにマルチプル・メジャー(複専攻)制度※を活用し、知能機械複専攻課程のなかでもセンシングと情報処理、材料力学・機械力学・機構学などを学び、プログラミングと物理世界との橋渡しに繋がる知識を習得。また、2年生から片寄晴弘教授のエンタテインメントデザイン研究室で、音楽情報処理やエンタテインメントの研究に取り組む。3年生からは学会での研究発表も行い、情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会のシンポジウム(2023年9月)において「GPT-4による対話的音楽生成のためのプロンプトエンジニアリング」で優秀研究賞を、情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会の研究発表会(2024年3月)では 「Landscape Wander: 現実世界の写真を2Dアクションゲームのフィールドとして利用する手法とその応用」でデモ発表賞をそれぞれ受賞。GPT-4による対話的音楽生成については、人工知能学会の全国大会(2024年5月)での発表や、情報処理学会 音楽情報科学研究会第141回研究会(夏のシンポジウム)では、「GPT-MCR: 聴取系フィードバック機構を組み込んだLLMベースの作曲システムの検討」の研究にて学生奨励賞(Best New Direction 部門)を受賞。休日には好きなゲームを楽しむことも多いが、最近では旅行も大好きで、美しい景色を眺めたり、写真を撮ったり、その土地の美味しいものを友達と一緒に味わったりするのが楽しいそう。

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