※この記事は2020年6月に神戸新聞に掲載されたものです。
日常が少しずつ戻り、生活やさまざまな活動のために外出される機会も増えていると思います。買い物に行く、学校へ通うなど屋外を歩く時、ふとなぜここに道があるのか、なぜこの建物があるのかなど考えたことはありませんか。
まちの中にある要素がそこにあるのには理由があり、意味があります。古くから地域にある重要な施設の多くは水害などから守るために高台にあります。まちは交通の要衝でもあり、地形や方位などが成り立ちに関係しています。
そのようにして人がつくり上げてきた「まち」について考えるのが都市計画です。普段の生活に組み込まれ、当たり前に享受している多くのインフラ(交通、電気、ガス、水道など)もこれまでの都市計画の蓄積です。
そのまちをさらに良いものにして、どのように将来に引き継ぐのかー。今日の生活や社会状況の変化を踏まえながら考えています。
私の最近の取り組みとして、空き家や空き地への対策があります。世帯が減ることで顕著になる空き家は今後さらに増えていきます。
ただ、空き家や空き地そのものが問題だとは考えていません。放置され、荒れ放題になって管理されていない状況が問題なのです。
管理問題は空き家・空き地そのものだけでなく、治安の悪化や害虫の発生などへもつながります。これは地域の問題にもなり、そのようなまちを歩くと何とも言えない暗い雰囲気を感じます。
住んでいない空き家とはいえ、所有者にとっては思い出の場所かもしれません。そのようなものを売った(貸した)方がいい、とは一概には言えません。定期的に訪問して風を通したり、水を流したり、庭の手入れをしたりと適切に管理されていれば、空き家であってもいいと思います。
また空き地の場合は、そこが緑地になればこれまで密集していた地域にゆとりをもたらしてくれます。風がよく通り、隣接する住宅の日当たりも良くなるでしょう。これまでできなかった地域活動ができることもあります。
地図を眺め、統計の数字だけを追っていても、そうしたことは理解できません。その場に行き、自分の目で見て分かるのです。
調査など地域に関わりを持った時は、まずそのまちを歩きます。ただの散歩にしか見えないかもしれませんが、歩くことでその地域の成り立ちを推察し、すれ違う人や道の様子などから地域の現状に触れることができます。
まち歩きはその都市を知り、まちに関わる第一歩なのです。
SHIMIZU Yoko
清水 陽子 教授
「ものづくりを残せるまちづくりを」というものを大きな軸として研究に取り組む。