データサイエンスの力で
生活習慣病リスクを解明。
大学院 理工学研究科 生命医化学専攻 修士課程2年生
※取材当時
岡田 時明 さん
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、心疾患のリスクを高めます。その心疾患の代表例の一つが、心臓の機能が弱まって全身に十分な血を送り出せなくなる「慢性心不全」。特に慢性心不全のなかでも約半数を占める「心臓拡張機能の低下が主因となっているケース」については、「生活習慣病患者の自律神経機能と関連する」と言われてきたのですが、実のところ、詳しくは解明できていなかったのです。この関連を明らかにし、病態理解とリスク評価に繋げる、というのが私の研究の目的。兵庫医科大学と連携し、実際に病院で計測された生活習慣病患者や慢性心不全患者のデータを解析する、といったデータサイエンスの手法により、この命題の解明に励んでいます。
第63回日本生体医工学会大会で研究成果を発表し、『2024年度 研究奨励賞・阿部賞』を受賞。「学会当日は、他の人たちの発表に感心するばかりで、自分が賞をもらうような発表をしているといった自覚はまったくなくて…。ですから受賞の知らせを聞いた時は、本当に自分が?と信じられなくて、意外に感じました」。
医療への貢献を志すなかで出会った、
データサイエンスの道。
新しい分野への挑戦心から踏み出し、
学会での受賞に至った。
中学生の時、私は潰瘍性大腸炎という難病に罹患しました。早期に見つかったので、今は普通に生活できるようになっていますが、生命医化学科で学ぼうと考えたのは「自分と同じように病気で苦しむ人々の助けになりたい」という想いもあってのことです。
しかし、大学での実験実習を繰り返すなかで「自分にはこうした勉強の適性がないのでは?」と疑問を感じるようになりました。そんな時に興味を持ったのが、データサイエンスです。実験に打ち込むだけが医化学研究じゃない、関学にはデータサイエンスを通して医療に貢献できる研究室もある。「そうした新しいことに挑戦してみよう」と考え、大学4年生からは吉野公三先生の『医療生体データサイエンス研究室』へ。ちょうどその配属当初に、兵庫医科大学との提携プロジェクトの話があったので、「ぜひ私にやらせてください」と希望して、そこからずっと今の研究テーマに取り組み続けています。
それまでデータに関する勉強をしてこなかったため、最初は苦労しました。吉野先生にご指導いただきながら、過去の文献や兵庫医科大学の研究も参考にして、この新しいプロジェクトでの解析の方法などを確立させていって…。そして修士1年の時、初めて学会でこの研究の成果を発表し、賞までいただくことができたのです。ずっと頑張ってきて、ようやく一つ、目に見える結果として残せたのは、本当にうれしかったです。
臨床現場の最前線と手を取り合い、
一緒になって進める研究。
自らの役割の意義や価値も、
そうしたなかで実感できている。
私が解析しているデータは、実際に臨床現場で計測された患者さんのデータです。ただ、私自身は現場に携わっていないので、いただいたデータがどのようなものか、現場の兵庫医科大学の先生に質問したり、自分で調べたりして、理解を深めています。そのなかで、たくさんの専門外の知識が自分の中に増えていくのが楽しい。生体の知識はもちろん、例えば治療で用いる薬剤などもデータに関わるため、この研究には本当にいろいろな知識が必要になります。
兵庫医科大学の先生にも、すごくお世話になっています。初めての学会発表の前、解析結果から「これだ!」という指標を得た時には、兵庫医科大学に「こういう形で学会発表をしたいのですが」と相談に行き、先生に「いいね!」とお墨付きをもらえたことが自信になりました。今年の発表でも、事前に先生から「このまま論文にしていいのでは?」といった反応をもらえ、心強かったです。
そうして医療の現場と密接に関わり合いながら、予防医療の精度向上に少しでも貢献できていると思うと、うれしいですね。自分にとって、この研究は私の適性にも興味にもマッチしていると感じています。楽な挑戦ではなかったですが、「自分で課題を見つけ、考え、解決していく」といった研究活動を通して、自主性の面でも大きく成長できました。データサイエンスの道を選んで良かったと、改めて実感しています。