ネットワークの混雑や遅延を
自動的に解消!
大学院 理工学研究科 情報科学専攻 博士課程2年生
※取材当時
ハン ネー アウン さん
インターネットでは、アクセスが1ヵ所に集中した時や動画などの高負荷通信が急増した時、回線が混み合い、遅延や通信不能が生じることがあります。こうしたネットワークの混雑を解消する仕組みづくりに大学院の研究室で取り組んでいます。機械学習を活用することで、人の手が介入する回数を極力減らし、最終的には「ゼロタッチでの自律的最適化型ネットワークアーキテクチャの設計」の実現をめざしています。つまりネットワーク自体が通信回線の状況を把握し、自ら交通整理をして、スムーズな通信状態を保ち続ける、というしくみです。私たちの研究室では、この研究の成果を積極的に論文に記して国内外の学会で発表し、多くの反響や高い評価を得ています。
ネットワーク自体が、環境変化やユーザーの通信品質要求に応じて「いつ・何を・どのように制御すべきか」を自律的に学習・判断して、回線の混雑を迅速に解消できる点が、ハン ネー アウンさんの研究のポイント。「学部生時代に他学科の科目も履修してAIや数学を学び、制御設計に必要な多角的視点が養えたのが良かったです」。
母国ミャンマーで抱き続けてきた、
情報格差への問題意識。
そうした社会の課題に、
本当の意味で向き合える研究者に。
私の母国はミャンマーです。生まれ育った地域では、ネットワーク環境があまり整っておらず、そのなかで、情報インフラの不均衡から生じる地域間格差について問題視するようになりました。「情報技術を使って、より多くの人々に高い教育と便利な生活を届けたい」。そんな想いから、日本の優れた情報科学を学ぶための留学を決意したのです。
母国ではネットに不具合が起こった時に、ただ困っていただけでした。大学で、情報科学を学んでみると「そういうことだったのか!」「こうすれば通信速度が上がるかも?」と、根本的な仕組みへの理解が深まっていくことが楽しくて。さらに大崎先生の研究室に配属後は、現在の研究テーマのように、ユーザーの利便性やネットワークの信頼性に直結する「より社会的意義が実感できる研究」に携われているのがうれしいですね。テーマ選定は学生主体で進めますが、大崎先生はいつも学生の関心と学術的・社会的意義とを結びつけるように議論して下さいます。そういった対話を通して、自分が心からやりたいと思えるテーマにたどり着けたのです。母国での漠然とした想いが、入学当初の興味と理解が深まり、そして今は本当の意味で「社会課題を捉え、学術的にアプローチできる研究者」に。そんな自らの成長を、改めて実感しています。
後輩と一緒に頑張ってきたからこそ
得られた、達成感と成長。
「日本とミャンマーの未来への貢献」に、
この道は続く。
1月にタイで開催された国際学会『ICOIN 2025』に、後輩と一緒に研究成果をまとめた論文が採択され、さらに『Best Paper Award』という栄誉ある賞までいただくことができて、本当にうれしかったです。研究室に配属された頃から、私は大崎先生からこの後輩の指導役を任され、自分が学んできた知識や経験をもとにアドバイスをしたり、研究課題に向けての意見を交換したり、私自身も後輩と一緒に成長を重ねてきました。これまでにも受賞の経験はありましたが、そうして後輩と頑張ってきた日々を振り返ると、今回の賞の喜びは格別でした。
私が関学を志望した理由の一つに、スクールモットーである「Mastery for Service」への共感があります。ここで学べば、自分の利益だけでなく、他者や社会全体のために行動できる人間になれる、と考えました。また、父が教育関係の仕事をしている影響もあって「教える」ことへの関心が強く、さらに大崎先生という素晴らしい師のもとで学ぶ中で、将来の夢も具体的になってきました。いずれは日本の大学で教授になり、最先端のネットワーク技術と人材育成を通して、日本とミャンマーの国民生活の質の向上と情報通信技術の高度化に貢献したい。そこに近づくための学びや経験を日々重ねることができ、とても有り難い環境です。