
「世界最速」の検索手法を
開発し、学会で受賞。
大学院 理工学研究科 情報科学専攻 修士課程2年生
※取材当時
舩本 直弥 さん
膨大なデータベースから、目的に合ったデータをいかに素早く効率的に探し出せるか? そのための情報検索技術の追究が、ますます情報化が進む現代社会において重要なテーマとなっています。そんななか、私は大学院の研究室で、情報検索技術の一つである「部分グラフ検索」の高速化について研究を重ねてきました。そしてついに、ある条件下でそれまで世界最速とされていた手法の約 1/8000 の時間で検索できる、飛躍的な高速化を実現する部分グラフ検索手法の開発に成功したのです。情報処理学会の『データベースシステム研究発表会』で学生奨励賞を受賞し、データベースに関する国際会議『DEXA』でも論文が採択されるなど、自らの研究が国内外で認められ、非常にうれしく感じています。

舩本さんが学会で「グラフコードを用いた索引による部分グラフ検索の高速化」について発表した際に使用したスライドより。これまでになかった部分グラフ検索の手法を開発・提案し、いくつかのベンチマークデータセットにおいて、その時点での世界最速の部分グラフ検索手法と比べ、著しく高速に動作することを実証できました。
「失敗=マイナス」じゃない。
苦難を乗り越えた体験が、
自分の価値観を変え、
研究の本当の楽しさに気づかせてくれた。
部分グラフ検索は、化学データを解析するケモインフォマティクスや、遺伝子などの構造化された相互作用ネットワークを解析するバイオインフォマティクスの分野で利用されています。私の研究成果によって検索が高速化することで、こうした分野での研究活動がよりスムーズになり、例えば薬の開発スピードの向上などに貢献できるでしょう。
私がこの研究に取り組み始めたのは、4年生の時。振り返ると、高速な検索の実現は一筋縄ではいかなかった、と心から感じます。アイデアを出しても出しても、そのたびにボツになって…。しかしボツアイデアの問題点を分析し、そこで得た新たな知見をふまえて次へ、といったサイクルを繰り返すことで道は少しずつ拓け、そこから世界最速となる部分グラフ検索手法の開発成功へとたどり着くことができたのです。
以前の私は「失敗=マイナスの言葉」と思っていました。でもそれは明らかに誤りだと、「ボツアイデアから高速化に繋がるアイデアを生み出す」という体験を通して、今は理解できています。「壁にぶち当たるのが研究であって、それこそが研究の醍醐味」であると、自らが研究に打ち込む日々のなかで実感でき、そうした苦労を逆に楽しく感じるようになっていきました。
自分の可能性に勝手に
壁を作ってしまっては、もったいない。
高い目標を掲げて挑戦することが、
成功と成長への第一歩。
研究にあたって、私は3つの目標を掲げていました。「最速の部分グラフ検索手法の開発に成功する」「学会で賞をとる」「国際会議での発表」の3つです。これらを絶対に達成するんだという強い意志も、苦労を乗り越えるうえでの支えになったと思います。そしてすべての目標を達成できたことで、自信が持てました。自分が学会や国際会議で発表するなんて、大学入学前は微塵も思っていませんでしたからね。「これは自分にはできないだろう」などと壁を作って敬遠するのはもったいないと、今は心から思います。
猪口研究室では、研究面以外でも多くの大切なことが学べ、成長できました。論理的思考力や文章力、そして何より「相手に説明する力」を鍛えられたのが大きい。学会発表でも、この力を発揮できたからこそ賞が取れたと感じます。そしてこれらの力は、今後社会人として歩んでいくうえでも非常に有益だと言えるでしょう。卒業後は、メーカーの社内SEとして働きます。目標は「特定の技術分野において一番の技術力を持つ人材となる」こと。どんな技術かはまだ具体的に決めていませんが、その技術を使うプロジェクトにおいて「舩本は必須」と言われる存在をめざしたい。この目標が、これからの私の大切な指針となります。