
欧州の醸造や食文化を
学ぶため、イタリアへ。
生命環境学部 生物科学科 植物昆虫科学専攻 3年生
※取材当時
下田 侑輝 さん
大学の「海外生命環境学プログラム」で10日間、イタリアへの短期留学に行ってきました。プログラムのテーマは「発酵醸造学(日本とイタリアの醸造文化)」。まず兵庫県内の酒造会社を訪問して日本の酒造りについて学び、その3ヵ月ほど後にイタリアへ。マルケ工科大学の教授をはじめ現地の方々にご案内いただいてワイナリーやブドウ畑を見学し、本場のワイン醸造について日本酒と比較しながら学ぶことができました。さらに食事や市場での買物を通してイタリアの食文化を体感したり、現地の子どもたちとの文化交流を楽しみました。「食品業界志望の自分にとって」というだけでなく、どんな未来をめざすうえでも、かけがえのない貴重な体験になったと感じます。

ぶどう畑の見学では、同行してくれたマルケ工科大学の教授から、強い日差しや病害からぶどうを守るための栽培の工夫や改良についてなど、大学で学んでいる内容と重なるお話もたくさん聞けました。「わからない点についてその場で質問するなど、英語でしっかりとコンタクトが取れたのも、いい経験になったと思います」。
「食」を支える研究に関心を抱き、
一方でイタリアという国にも
大きな魅力を感じていた自分にとって、
絶好のチャンスだった。
僕は大学で生物学を学んでいて、なかでも「農作物の生産性維持や向上のための植物の品種改良」といったテーマに強い関心を持っています。自分自身がもともと「食べることが好き」ということもありますが、やはり「食を支える研究」は大切だと思います。そして、大学で専門的に学ぶなかで養った知識や能力を生かせる将来の進路として、加工食品や飲料メーカーを視野に入れています。
ですから、今回のプログラムの募集を知った時は、すぐに「参加したい」と思いました。食品業界をめざすうえでお酒やワインの知識は絶対に役立ちますし、何より、幼い頃から一番行ってみたかった憧れの国・イタリアに留学できるというチャンスを逃したくない。大きな期待を抱いて参加し、そして、その期待以上の素晴らしい体験ができたと実感しています。
まず国内の酒造工場で「三段仕込み」といった日本酒造り特有の工程をじかに見て学び、イタリアでもトラックで運ばれてきた大量のぶどうが一気に加工されていく様子を実際に見ることができました。日欧の醸造方法の違いや、量産・効率化に向けて工夫を積み重ねてきたそれぞれの歴史についても深く学べ、自らの就活にも有効な、醸造文化に関するたくさんの知見が得られました。
自分の目で見て、自分の耳で聞いて、
さらに香りや味まで体感して。
強く記憶に刻まれたこの学びの価値は、
どんな未来にも生かせる。
日本の酒造工場でもイタリアのワイナリーでも「映像資料などで見るのとは全然違う!」と感じました。日本酒造りでは搾りたての清酒の香りが、そしてワイナリーでもそれに負けないくらいの強いぶどうの香りが広がって…。試飲して、それぞれのおいしさも体感できました。また、どちらも現場の方に案内や解説をしていただけたことで、より強く自分の記憶に刻まれたと思います。
他にも街並みや歴史的な名所を見たり、パスタやハムなど現地の「食」を実際に味わったりといった体験を通して、イタリア文化への理解が自然に深まりました。プログラム終盤には、現地の大学や研究機関によるイベント「シャーパーナイト」に参加して、日本の酒造りについての発表を行い、現地の子どもたちに簡単なイタリア語で、折り鶴など日本文化を教えるといった交流を通し、楽しく対話できたのは嬉しかったですね。
実は進路についてはまだ迷っていて、就職以外に教職や大学院進学といった選択肢も考慮しています。食品業界に就職するとしても、研究職の他に営業職も視野に入れています。ただ、このプログラムを通して学んだたくさんの知識や経験は、「食」に貢献する仕事だけでなく、どんな未来をめざすうえでも、存分に生かせることは間違いありません。