植物と微生物の
共生メカニズムを探り
世界の食料安全保障に貢献。
生命環境学部 生物科学科 植物昆虫科学専攻 4年生
※取材当時
末神 紗希 さん
私が取り組んでいるのは、植物と微生物の「共生」についての研究です。植物の根の中で生きている根粒菌や菌根菌のような「共生菌」と呼ばれる土壌微生物は、宿主である植物とお互いに足りない要素を補い合って成長効率を高めるといった共生関係を築いています。私が所属する武田直也先生の「植物共生工学研究室」では、この共生のメカニズムの解明に挑戦。そのメカニズムのなかのカルシウムスパイキングという現象の検証が私自身の研究テーマで、これを人工的に再現する実験に取り組み続けています。これらの研究成果を生かせば、化学肥料の代替となる環境に優しい農業技術として、この共生を農作物の収量アップに役立て、世界の食料安全保障にも貢献できます。
「条件を変え、何度も実験を重ね、どれが最適かを探っていく。地道ですごく大変な作業ですが、そこが面白いとも感じます」と末神さん。特殊な実験のため、実験に用いる機械を自作することも。「元からある機械も使い方が複雑で覚えるのに苦労しましたが、武田先生がいつでも親身になって教えてくれるので、助かっています」
植物と微生物との間で起きる
現象の人工的再現にチャレンジ。
繊細な実験の積み重ねに
苦心しているけれど、そこが面白い。
植物について本格的に学ぼうと考えたきっかけは、高校の時に受けた生物の授業です。植物改良の技術で農作物の収量が向上し、それが世界の食糧問題の解決の糸口になると教わり、興味を持ちました。大学の授業では、植物改良をはじめ生物学についてとても幅広く学べ、そうしたなかで微生物にも興味が広がりました。現在の研究室への配属を希望したのも、食糧問題の解決に繋がるような実用的な植物利用について学べる点はもちろん、「植物と微生物の両方の研究ができるから」という点も大きな理由となっています。
今取り組んでいる実験はとても繊細で、条件の微妙な違いで結果が大きく異なってしまうため、すごく苦労しています。カルシウムを注入する時の僅かな手の震えや、その日の機械の調子などでも結果が変わったり…。それでも植物と微生物の共生のなかで起きる現象を人工的に再現するという試みはとても面白いですね。ただ私自身、まだスパイキングという現象自体への理解が不足していて、それに付随する周辺知識を固めていかないと条件検討について考えるのは難しいと感じています。もっと勉強してたくさんの知識を身につける必要があると思いますし、そういう意味でも授業で生物学を幅広い分野を学んで基礎が築けたことは良かったです。
ハンズオン・ラーニングや
マレーシアへの短期留学など、
専門領域を超えた幅広い挑戦が、
研究活動を支える力にもなる。
1年生の春学期に、ハンズオン・ラーニング・プログラムの入門科目である「社会探究入門」を履修しました。幅広い題材の書籍を読み込み、グループワークを通して「私たちの社会とは何か」といったテーマを探究していく、といったプログラムです。理系の学生は少なく、学年もバラバラといったグループワークのなかで自分にはない多様な考え方に触れ、新鮮な刺激を受けました。論理的思考力や問題解決能力の向上にも繋がり、実験の条件検討や論文の作成などでもこのプログラムで養った力が生かせると感じます。
論文を書くには英語力も必須です。私は3年生の時に「科学技術英語」を履修。理系の学生たちのための英語の授業で、それぞれ自分が学んでいる専門分野について英語で発表する、といった内容でした。さらに3年生の春休みには、マレーシアのマラヤ大学での短期留学にも挑戦。バディとして案内してくれた現地学生と思うようにコミュニケーションが取れず、「お互いの想いを共有できればもっと楽しめたのに」という悔しさから、帰国後も自主的に英語学習に力を注ぐようになりました。研究を進めていくには英語の文献を読み解く力も不可欠。専門分野以外の様々な学びも、大好きな研究活動を支える大きな力になっています。