自治体の都市計画に
「次代の建築家」の視点で提言。
建築学部 建築学科 4年生
※取材当時
岸田 早映香 さん
神戸市の王子公園では、現在、再整備事業が進行中です。この計画に伴い、関西学院大学も同公園内に新キャンパスを2029年4月に開設する予定。「ならば自分たちでも再整備案を考えよう」と、私の所属する「建築デザイン研究室」では学生視点での再整備計画策定に挑戦。最寄駅と公園、王子動物園と大学とを直接結ぶ遊歩道の設置に加え、大学の施設を一般開放して地域のみなさんとの交流活性化をめざすプランを練り上げ、神戸市へ2023年9月頃に提出しました。「再整備で緑が減るのが心配」という住民の方々の声を反映し、市の案ではビルだった駐車場を地下に設置して、地上を緑地にするという改善策も提示。私たちのこの案が反映され、よりよい公園になるといいなと、期待しています。
研究室で建物の見学に行った際には「日本の林業の持続的保護の観点から木の部材を積極的に用いた」「現場で施工に携わる人たちの声を反映して、加工方法に工夫を施した」といったお話や、地域住民との関わり方など現実的な課題についてうかがう機会も。そのたびに岸田さんは、建築の役割とその奥深さを実感しています。
「その建物がなぜかっこいいのか?」
は理論的に説明できる。
実際にさまざまな建築物に触れ、
さらに見識を深めていく。
私が米田明先生の「建築デザイン研究室」に入りたいと思ったきっかけは、2年生の時の「建築設計演習」の授業でした。それまでの私は漠然と「かっこいい住宅をつくりたい」と考えていましたが、この授業を担当していた米田先生から「この立地条件ならどういう間取りがふさわしいのか」「どういう理由でこの構造・機能を取り入れるのか」といった理論的な指導を受け、「かっこいいと感じる建物には、細部まで理論的な理由があるんだ」と気づけたのです。「この先生からもっと学びたい!」と熱望し、私は3年生から今の研究室に仮配属となりました。
この研究室では、時代背景や用途が異なる多様な建築物の見学にもよく行きます。京都の日本庭園・歴史的建造物を訪れた時は、自然を生かして居心地のよい空間をつくるという日本人の美的感覚に触れることができました。兵庫県立美術館では、館長から「アートと建築の関係」についてのお話がうかがえました。実際に自分がその場に行くことで、写真ではわからない「その空間の雰囲気」を肌で感じたり、本やネットでは知り得ない情報を現地の方から直接お話ししていただけたりと、とても貴重な体験ができています。
海外での経験も生かし、
SDGsの「その先」にある
次代の建築家が果たすべき
役割を突き詰めていきたい。
オーストラリア・アデレード大学での建築学国際プログラムでも、大きな収穫がありました。特に印象的だったのは、現地学生とのグループワークです。街の活性化に向けたプランづくりが課題で、その街の歴史や文化、人の動きなどをリサーチし、これをふまえたウォールアートを取り入れ、利便性を高めるケーブルカーの設置も提案。地域の特性を生かし、完成後の人の動きまでイメージすることの重要性を再確認できました。
建物には、周囲との調和を意識するといった公共への配慮のほか、「歴史や文化、宗教、芸術等の反映」「安心・安全、快適性の追求」「環境にやさしいエネルギーシステムの採用」などが求められます。米田先生からも「これからの建築家にはテクノロジーとアート、そして『どのように複雑な機能をまとめ、生かしていくのか』といったマネジメントの視点が欠かせない」と教わっています。さらに新たなテクノロジーが私たちの生活を変えることもあるため、テクノロジーの進化への対応も不可欠。SDGsへの配慮は建築家として当たり前であり、さらに「その先」を見据えた学びを深め、建築を通してさまざまな社会課題を解決へと導ける、次代の建築家として必要な素養を身につけていきたいと思います。