研究から探す

超電導を利用して豊かなエネルギー社会の創造を目指す。

※この記事は2020年5月に神戸新聞に掲載されたものです。

2027年、東京(品川)―名古屋間を最速40分で結ぶリニア中央新幹線(通称マグレブ。マグネット・レビテーション=磁気浮上=の略語)がいよいよ開業(予定)します。

同新幹線が世界中から注目されているのは、超電導磁石を利用した磁気浮上式鉄道だからです。非常に強い超電導磁石と19世紀のイギリスの科学者マイケル・ファラデーが発見した電磁誘導現象を利用し、車両を約10センチも浮上させます。これは超電導磁石でないと実現できません。

超電導とは、特定の金属や化合物がある温度を下回ると、電気抵抗がゼロになる現象のことです。電気抵抗がゼロですので、超電導材料を使えばエネルギーの損失なく電気を送ることができます。また大量の電気を流せるので、非常に強い電磁石を作ることが可能です。

この超電導現象は1911年、オランダの物理学者カマリン・オンネスによって発見されました。液体ヘリウム(沸点マイナス269度)を使い、極低温での水銀の電気抵抗を計測している時のことだったそうです。

その後、世界中で超電導物質の開発競争が行われ、日本でも非常に多くの超電導物質が若い学生や研究員などによって発見されています。これら超電導を用いた技術の実用化も始まっています。

ただ、これまで実用化されている超電導応用機器の多くは、超電導材料を冷やすために液体ヘリウムを使用することから、冷却コストが高く、取り扱いが困難という欠点があります。マグレブも液体ヘリウムで冷却しなくてはなりません。

そこで現在は、液体ヘリウムよりも安価でかつ沸点の高い液体窒素(沸点マイナス196度)で超電導状態を示す高温超電導材料の研究が盛んです。冷却コストを削減でき、電気エネルギーの損失を大きく抑えられる特長を生かして、省エネルギー社会実現に向けた電力送電システムでの利用が広がりはじめています。

私の研究室では、いろいろな方法を駆使して超電導物質を作り、その物質が起こす新現象を発見、解明しています。同時に、超電導応用技術をさらに使いやすくしてさまざまな用途に利用してもらい、豊かなエネルギー社会を創り出そうと研究に取り組んでいます。

関西学院大学では21年に理工学部を再編し、工学部電気電子応用工学課程を設置します。われわれの未来社会を支える電気エネルギーを有効利用し、持続可能な社会に貢献する材料や技術、システムを開発していきます。

尾崎 壽紀</span> 准教授

OZAKI Toshinori

新規超伝導物質を中心に次世代新機能性材料を設計・探索し、輸送システム技術の革新を目指す。