建築のパワーを探究し、
単身、イギリスへ。
総合政策学部 都市政策学科 2015年3月卒業
WHITEBRICK STUDIOS LIMITED 勤務
寺戸 佑希 さん
自分が考えたコンセプトを、空間に展開していく。私は関西学院大学で建築を学び、そうした建築の面白さに引き込まれました。構造などのハード面よりも、理論や考え方などのソフト面に強い関心を持ち、大学卒業後は、建築のコンセプトワークなどについてより深く学べるイギリスの建築学校に進学。日本で学ぶ以上に幅広い視点で建築を学ぶなかで、私は建築が持つパワーについて深く考えるようになりました。例えば空間を通して新しいライフスタイルを提案するなど、建築には人にさまざまな影響を与えるパワーがある。そのパワーを使って、私に何ができるか? 何がしたいのか? その答えに向かって、私は今日もイギリスの建築設計事務所での仕事に打ち込んでいます。
学生時代からコンペにも積極的に参加。「なぜこの建物を建てるのか、なぜこんな形なのか、アートだと理由はなくてもいいのかもしれないけど、建築の場合は理由が求められます。コンセプトを考え、空間的な物事のつながりを自分なりに定義して、設計案に落とし込んでいくプロセスが楽しい」と寺戸さんは話します。
イギリス郊外の町の事務所で
将来に向けた経験を重ねる日々。
現在の私は、主に住宅設計を手がける、5名ほどの建築設計事務所で働いています。オフィスがあるのは、ロンドンから北に車で30分ほどの郊外の町・ヒッチン。歴史的な価値を持つ建物に手を加えて住まいにしているような富裕層が多い町で、私たちへの依頼もそうした案件が中心です。小規模な事務所なので、プロジェクトのすべての工程に参加できるのが魅力。今の私はまだ入って数ヵ月の新人なので、一つ一つの工程について学んだり、歴史的建造物の価値や外観を損ねないようにと考える自治体や政府から建設許可を受けるための調整をしたり、費用の計算をしたり、といった毎日ですが、それらもすごくいい経験だと感じます。ここで成長を重ね、将来は大学時代に都市政策を学んだ経験も生かして、政府や自治体とともに取り組むプロジェクトなどスケールの大きい仕事ができる建築設計事務所で働きたい。イギリスに限らず、欧州の他の国でも、日本でも、チャンスがつかめるならどこへでも行きます。
オランダの建築設計事務所の
壮大な計画から気づけたこと。
オランダのOMAという建築設計事務所とオランダ政府が「海上に人口島を建設し、各地の風力発電所からその島へいったん電力を集め、欧州各国へと分散供給させる設備をつくる」といったプロジェクトを進めています。壮大な取り組みで、案が出た当初は「無謀だ」という声も多かったそうです。実際、領海などの政治的な問題、コストやエンジニアリングの問題など、障壁は多かったと思います。でもこの発案により「そういうこともできるんだ」とみんなが気づけた。それを発電所でなく、建築事務所が主導しているというのが、すごいと思いませんか? 建築が持つパワーは、社会に大きな影響をもたらす可能性も秘めています。今の私にはまだそのパワーを発揮できませんし、パワーの使い道も定まっていません。料理で例えると、ただ野菜を切るのに一生懸命になっていて、できあがりの味がわからない状態です。実務を通して成長しながら、私自身が建築のパワーを使ってどんな社会を築きたいか、追求していきたいですね。